昨日は横浜から星川まで歩いた。
途中歩きながら聴いたマルティヌーの曲は、
コンチェルト・グロッソと3つのリチェルカーレである。
そろそろ話題を管弦楽曲の東欧編に戻ろうと思うので、
マルティヌー特集の最後は管弦楽曲にしておく。
まず、コンチェルト・グロッソについてとりあげる。
この曲は1937年に作曲されパリで完成したが、
初演されたのはその3年後の1940年であった。
第一楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポは軽快な音楽で、
弦楽器とピアノと管楽器のおりなす音楽は、
徐々に変化していきながら、その音色を変えながら、
マルティヌー独特の世界を作りだす。
コンチェルト的な最初の主題は最後にまた登場する。
第二楽章アダージョは、哀歌である。
バルトークを思わせる部分もあるが、
深刻な感じで、第一楽章とは対照的だ。
第三楽章のアレグレットは再び第一楽章のような曲想に戻り、
最初ピアノの技巧が目立つ部分がいつくかで出てくる。
徐々に音が上昇していくマルティヌーらしい展開の中、
管楽器などの活躍する場面もあり、
コンチェルト的なこの曲の特質を感じさせる。
3つのリチェルカーレは1938年に書かれた作品である。
第一楽章アレグロ・ポコは、軽快な曲で、
木管と弦楽器のかけあいの中で、音楽が展開していく。
ピアノと金管も登場し、コンチェルト・グロッソのようであるが、
それ以上により各楽器の個々の奏者の技が競われ、おもしろい。
古典主義的な音楽であるが、
第ニ楽章ラルゴは最初に登場するフルートの旋律が魅力的だ。
音楽は徐々に厚みを増し、高みへと達するが、
それが終わると音楽はまた静かになり、
フルートを中心にオーボエなど管楽器とピアノがからみ、
その後は弦楽器を中心に展開されていくが、
最後はフルートを中心とした最初の主題が登場して終わる。
第三楽章アレグロは、リズミカルな主題をもとに、
音楽はピアノを中心に弦楽器・管楽器がからみあっていく。
新古典主義的な音楽の特徴をみせつつも、
ここでは、さっきのコンチェルト・グロッソよりも
さらに進化した彼の作曲技法がみられる。
この1930年代のヨーロッパは、戦間期にあり、
ドイツでナチスが台頭し、オーストリア併合などの軍事行動を展開し、
さらに1940年代に入るとフランス侵攻へと向かい、
マルティヌーにとっては活動の場所パリを失い、
故郷チェコもナチスの勢力下に入れられてしまうようになる。
激動の時代の中で書いた彼の作品の多くは、
軽快であり、その影を感じさせなかったりするが、
コンチェルト・グロッソの第二楽章を聴くと、
そこに時代の深刻な状態になっていくであろう彼の予感を
なぜか感じてしまうのである。