昨日は、二俣川から鶴ヶ峰駅まで歩きました。
途中聴いたのは1934年生まれのカラマーノフの作品。
彼の略歴は交響曲編で触れたので、省略する。
ピアノ協奏曲第3番「アベ・マリア」は、1968年に作曲された。
今回のCDはウラディーミル・ヴィアルドのピアノ、
アントニオ・デ・アルメイダの指揮、モスクワ交響楽団の演奏による。
第一楽章アレグレットは、冒頭のトランペット・ソロに続き、
独奏ピアノが美しい旋律を奏で、それが終わると弦楽器が入り、
再び独奏ピアノが入るが、CDの解説書によると、
トランペット・ソロが奏でるのはリディア旋法であるようだ。
そのトランペットが吹く旋律は孤独感を思わせるもので、
続く独奏ピアノと管弦楽も過去への回想を感じさせるものである。
ピアノ独奏と、管弦楽、トランペット・ソロが交互に断片的に現れ、
いわゆる伝統的なピアノ協奏曲のスタイルとはだいぶ違う感じである。
ピアノが奏でる旋律は宇宙を感じさせるようで、
環境音楽のようにやさしく響き、神聖さをも感じさせる。
第二楽章ラルゴは、独奏ピアノによって始まる。
彷徨い続けるような独奏ピアノの迷走的な旋律に、
弦楽器から始まり管弦楽の伴奏がやさしく入るが、
独奏ピアノ中心にオスティナート風の旋律が展開される。
この短い第二楽章に続き第三楽章アンダンティーノは、
再び第一楽章の同じ雰囲気が戻り、そこでの主題を素材にしているようだ。
この作品はロシア人の母パウリーナ・セルゲイェヴナ・カラマーノヴァの
死をきっかけに、その死への哀悼という気持ちから書かれたようであるが、
この音楽はロシア的というよりアジアの民族音楽的な響きを持っている。
彼がクリミア生まれで、父がトルコ人であることも関係するのだろう。
独奏ピアノが弾く旋律は同じ音型を繰り返すオスティナート風のもので、
「アベ・マリア」という題名からしてもいえるのだが、
宗教的な響きを持った祈りのような音楽である。
後半になると管弦楽そして独奏ピアノは情熱的になり、
繰り返される音型をもとに大きな盛り上がりを見せていくが、
そのクライマックスが過ぎると徐々に静まっていくが、
繰り返される音型を独奏ピアノが弾き、最後消えるように終わる。
キリスト教に関する作品をカラマーノフは多く作曲したようで、
この作品もその一つであるようだが、そこにはアジア的な響きがあり、
よくじっくりと聴いてみると不思議な魅力を持った曲である。