昨日は、鶴ヶ峰と二俣川の間を歩く。
途中聴いた曲は、1871年生まれのツェムリンスキーの作品。
バレエ音楽「ガラスの心臓」からの組曲であるが、
持っているCD自体はもう廃盤になっているようで、
この曲を聴くことはなかなか難しいのかもしれない。
Wikipediaの情報を参考にさせてもらうと、
ツェムリンスキーの母方の祖父がセファルディ、
祖母がトルコ系ムスリム、父親はカトリック教徒だという。
いかにも、当時の他民族国家オーストリアの姿を反映している。
ツェムリンスキーと関わりのある人物として3人あげると、
一人目はブラームス。だから初期の作品は彼の影響が濃い。
二人目はシェーンベルク。彼とは親友関係にあった。
三人目はアルマ・シンドラー。彼女に彼は作曲法を教えたが、
それだけでなく、二人は一時期恋愛関係になった。
しかし、アルマがマーラーと出会い、
彼とアルマが結婚することで両者の関係は終わりを告げる。
作曲・教育や指揮者としての活動で活躍したが、
ナチスが台頭するとウィーンに逃れ、
さらにはアメリカに移住したが、
慣れない土地で、慣れない英語を話すのは大変だったろう。
CDの解説によると、三幕もののバレエ「ガラスの心臓」、
このタイトルは「時の勝利」の一幕からとっているようだ。
全曲版の完成は1904年であるが、この演奏会用組曲は、
1903年2月8日に初演されている。
第1曲(適度に揺れ動き)は、幻想的な感じで始まる。
フンパーディンクではないが、メルヘン的であり、
ホルンの吹奏がいい。そして、いかにもバレエ音楽的である。
第2曲(適度に)は、第1曲と同じ感じで始まるが、
ワルツの音楽が流れ、華やかで優雅な曲である。
最後の方で、角笛を模したホルンが登場し、
やや悲しげな旋律が流れ、最後は終わる。
第3曲(とてもはやく)は短い曲で、その冒頭は、
ファンファーレ風のホルンの吹奏に始まり、
最初に登場する主題をもとに曲が展開されていく。
第4曲(ゆっくりと行進曲のテンポで)は、
この4曲の中では演奏時間が一番長く、17分近くかかる。
ファンファーレ風のホルンの吹奏に始まり、
ゆったりと堂々とした行進曲風の主題が流れる。
そのあとはワルツ風の優雅な音楽が流れ、
夢のような甘い旋律の音楽が展開されていく。
最後は最初の行進曲風の主題が登場して終わる。
しかし、ワグナーっぽい音楽である。
この作品に取り掛かった頃のツェムリンスキーは、
アルマ・シンドラーに夢中になっている時期だった。
だから、彼女からその作品に関わるインスピレーションを
受けたかもしれないと、CDの解説では書いてある。
全般的に幸せに満ち、ロマンティックな感じの曲なので、
そう思えないこともないが、ともかく後期ロマン派の流れを
しっかり感じ取ることのできる曲である。
アルマと別れた彼は、その後イーダと結婚するが、
結婚生活はうまくいかず、多くの浮気を重ねたという。
アルマとの思い出を引きずっていたのだろうか。
その後、彼は弟子で、29歳年下のルイーゼと結婚した。
彼の死まで結婚生活は続いたという。
ツェムリンスキーは最後まで12音技法には行かず、
最後まで後期ロマン派の流れを守った。
アメリカでは病気がちだったので作曲ができなかったようだ。
健康な体で、作曲ができたとしたら、
彼はどんな音楽を作曲したのだろう。