昨日は横浜から和田町まで歩いた。
途中聴いた音楽は、シューベルトの歌曲集「冬の旅」。
あまりにも有名な曲ではあるが、しみじみ聴く機会はあまりない。
もちろん、「菩提樹」など有名な曲はあるのだが、
とにかくよく聴くとはやり傑作なのだなと思う。
1827年に世に出たこの作品は、
まさに、歌とピアノ伴奏が一体となって、
はじめて一つの芸術なのだなあと思う。
歌の持つ魅力はもちろんなのだが、
ある時にはピアノがそれ以上に雄弁に語りだす。
詩の内容だけでなく歌とピアノの伴奏によって、
はじめてその人物の心情と彼を取り巻く世界を描き出す。
ピアノの伴奏がなぞっている音符はなんでもないように見えても、
それが伴奏者のピアノがどう表現するのかが重要なのだ。
だから、この曲の伴奏を編曲し、管弦楽化すること自体が、
意味のないことなのかもしれないくらいに、
音楽として、完成しているのだ。
指揮者ハンス・ツェンダーはそれを承知してか、
伴奏部分を管弦楽化し、あえて「創造的編曲」としているが、
これは彼の新たに創造した作品の世界である。
私だったら、最初の「おやすみ(Gute Nacht)は、
マーラーの交響曲(6番くらいかな)の作風で、
管弦楽に編曲したいものだ(といってそんな能力はないが)。
テクストとして使用しているミューラーの詩は素晴らしい。
この詩があってその世界を忠実に音楽で描こうとした
歌曲集「冬の旅」は名曲なのであろう。
なお、最後の「辻音楽師」という曲、
これ一曲をとっても、なかなかすごい曲だなあと、
つくづく歌曲の奥の深さを感じてしまうのである。