昨日は二俣川から鶴ヶ峰駅まで歩きました。
途中聴いたのは1784年生まれのシュポアの作品。
ドイツ・ロマン派の初期にあたる彼は、
当時ドイツ国内でヴァイオリン奏者として活躍し、
ロシアのサンクト・ペテルブルクやイタリア、
イギリスそしてパリなどにも演奏旅行を行なった。
200人近くのヴァイオリン奏者、指揮者、作曲家を育てあげ、
教育者としても当時活躍したようである。
弦楽五重奏曲は、1850年に作曲された作品である。
和声などにおいてはロマン派的な要素を持ちながら、
様式上は古典派的な要素を残している彼の作品の特徴は、
この作品の中にも現れていると思う。
その一方で1848年に起きた二月革命・三月革命のさなかにあり、
シュポアもその行方をみていた人物であるだけに、
その時代背景が彼の作品にも影響を及ぼしているかもしれない。
期待、不安、失望、怒り、様々な感情を抱きつつ、
この時期の作品は書かれているのではないだろうか。
第1楽章アレグロ・モデラートの冒頭は、
やりきれないような少し物悲しげな感じで始まる。
ヴァイオリンが弾く短調と長調の主題をもとに
ソナタ形式で展開されていく曲はロマンティックである。
ヴァイオリン奏者の彼らしく第1ヴァイオリンが活躍し、
弦楽五重奏曲なのにヴァイオリン協奏曲風でもある。
第2楽章ラルゲットは、ヴァイオリンが甘い旋律を奏でる。
穏やかな音楽は宮廷的でもあり、華やかでもある。
第3楽章メヌエットのト短調で始まる主題は、
1848年の二月革命・三月革命以降変化していく当時の
激動の時代を示しているようでもある。
中間部のトリオはト長調で書かれているが、
何となく落ち着いていない感じである。
冒頭のト短調が再現され、最後も悲観的な雰囲気は残る。
第4楽章アレグロ(フィナーレ)は、明るい楽天的な曲である。
ここでも第1ヴァイオリンの活躍する場面が随処にみられる。
夢みるような明るい感じの主題が繰り返され、
幸せに包まれたような雰囲気の中で曲は終わる。